タカラヅカとご贔屓と私

いつも心に黒燕尾

生まれて初めての3列目で花組の『雪華抄』『金色の砂漠』を観た

2014年の花組エリザベート』観劇から約2年、ついに私にも幸運が巡ってきた。初めてのSS席チケットである。宝塚大劇場は、SS席12,000円、S席8,300円、A席5,500円、B席3,500円の4種類の座席がある。総席数は2,550席。そのうちSS席はわずか194席。1階席のセンター・サブセンターブロック7列目までの「超良席」ゾーンで、とにもかくにも入手困難、初心者にしてみれば憧れでしかない。

そのSS席、しかも3列目のほぼセンター席で大好きな花組の『雪華抄』『金色の砂漠』を観ることが出来た。なんかもう凄かった…としか言いようがない、全てはスパンコールのきらめきの彼方なんですけど、この感激をずっと覚えていたいので、書き残したいと思います!!!!

 

・開演アナウンス

もう、これからして違う。私の通常観劇席(1階席後方)だと、舞台側から客席全体へ「放送されてる」感じだったが、SS席だと「真上からご贔屓の声が降り注いでくる」感じがした。そのままときめきで召されそうになるのを肘掛けを掴んで耐えた。

・チョンパの衝撃

ド暗転し、拍子木が「チョン」と鳴り、照明が「パッ」とつくと、舞台上には出演者が勢揃いしている。今回の『雪華抄』は日本物のショーだったので、このチョンパでの幕開けだった。これがまたすごかった。なんせこちらは初めての3列目である。3列目から観る景色がどういうものか全く分からない。そんな中、暗転し、照明がつくと、目の前にいきなり光り輝くご贔屓が立っている。ほんとにリアルに「ふわぁぁ…」って声が漏れたし、ほろほろ涙がこぼれた。よく小説や漫画で、「人は悲しい時にだけ泣くんじゃない。嬉しい時にも涙は流れるんだよ。」的な台詞があるけど、それに「あとチョンパで明日海りお様が目の前に現れた時も涙は流れるよ」と付け加えたい。

・銀橋

宝塚の舞台構造の中でも大好きな銀橋。舞台前面、オーケストラと客席の間にある通路のような舞台(エプロンステージ)のこと(公式HPの用語辞典より)で、つまりオケピを越えて客席側にくるわけで。通常観劇時も銀橋渡りが大好きで、いつもテンションぶち上がって「わ〜♡銀橋きたきた〜!!」となってるところ、3列目はもう半端なかった。銀橋の出発地点に向かってきた段階で、「おおおおお渡りになるぞ!!!!皆の者!!!!」みたいな、心の中で銀橋お祭りフェスティバル!!状態になる。とにかく近い。近すぎる。中詰で花組子達が駆け抜けていった時はなんかいい匂いがしたし、安珍と清姫の場面で足袋を履いた明日海安珍様が通った時はそのおみ足の小ささに釘づけになった。3列目からの銀橋、最高である。

・目線

これも宝塚用語になるのかもしれないが、「釣る・釣られる」という言葉がある。ジャニーズ用語で言う、「ファンサ」が近いのかもしれないが、舞台上の組子(主に男役)が客に対して、ウィンクや指差し、投げキッスで「射止める・ハートを奪っていく」ことを指す。花組の男役は下級生であろうとも、「銀橋に出させてもらったからには、釣りまくっていきますんで!!」という気概のある組子が多くてとてもいい。とはいえ今回は日本物のショーなので、釣り場面は一切なく、みやび〜〜に進んでいく。ただ、釣りといわないまでも、お三方から目線をいただいた。

一人目は花組の彼氏こと、瀬戸かずや様である。『雪華抄』中詰終わり、銀橋から客席への階段、下手側に足をかけてお歌いの際、たまたまセンターブロックでその時下手を向いたのが私だけだったからか、瀬戸さんが「おっ」と目をつけてニヤリと微笑んで下さった。死ぬかと思った。さすが花男の中の花男、粋な青天と相まって、めちゃくちゃかっこよかった。二人目はまさかの松本悠里先生である。フィナーレで銀橋にお並びの時、明日海りお様のお隣にいらっしゃった先生と目が合うと、小首をややかしげて下さった。これはもう畏れ多いとしか…有難うございました…。

そして三人目はご贔屓の明日海りお様。といっても個人的にではなく、『金色の砂漠』パレードの最後の最後、銀橋から去られる前にお足もとのセンター付近3,4席・前から4列目ぐらいまでの客に順に微笑みを下さるような、ご挨拶的目線である。でも死ぬかと思ったし、同時に生きてて良かったと思った。心の中で、REC!!と強く念じたので、「走馬灯の時に再生するフォルダ」に入っていると信じたい。

・ご贔屓の情報量

3,500円のB席でも同じ舞台を観られると、そう思っていた。それは正しくもあり、しかし同じではないんだなとも思う。3列目だと同じ舞台を観ていても、伝わってくる情報量が違う。まず明日海りお様においては、私が1番好きな顔、顔というかもう、ご尊顔!!という迫力の情報量。とにかく美しかった。近くで見ても毛穴どころか肌あれも見当たらない。プロジェクションマッピングだと言ってもらった方が納得できる。しかしながらターバン黒燕尾の最後のキメポーズ後、少し胸元が上下していて、ハッ生きている…!という感動を覚えた。

そして芝居。安珍と清姫の場面の銀橋で、清姫を振り返り、その後自分の気持ちを律しようとする、「…くっ」という微かな息遣いが聞こえた。『金色の砂漠』の牢屋で、「なぜ誇りを守らなかった!!」と王妃に食ってかかる場面で、飛び散る涙粒が見えた。激情のうねりに飲み込まれる、忘れられない観劇になった。

 

双眼鏡で観ると、どうしても視界が狭くなる。全体を観たくて双眼鏡を外すと、表情が分からない。3列目だと、全体を把握しながら表情もはっきり分かる。考えれば当たり前だが、私は双眼鏡を使うのがデフォルトになっているのでこれが本当に素晴らしかった。『雪華抄』のフィナーレ、色とりどりの着物に身を包んだ花組子達が勢揃いし、上から桜の花びらがひらひらと舞う場面がとても美しくて、あまりにも幸福感に包まれて、三途の川の向こう岸ってこんな感じなんだろうな…と思った。そうなると私は水上ジェットスキーで三途の川を爆速で渡るっきゃない。三途の川のスピードスターになる!!

というわけで、生まれて初めてのSS席、本当に最高でした!!また座れますように〜!!