タカラヅカとご贔屓と私

いつも心に黒燕尾

ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』(2021)感想・第二幕

東京公演も無事全日程が上演され、いよいよ名古屋公演ですね。どうか何事もなく、大千秋楽を迎えられますように…!!
という祈りもこめて!私は書くぞ、消えた男爵夫妻だけでなく第二幕もろもろ~!!

 

第二幕
第1場B 婚約披露パーティー

『神様は不公平』を歌うのはバイク・ブラウン役の丸山泰右さん。数々のミュージカルにご出演されてきただけあって、さすがの安定感&表現力のある歌声で盛り上げてくれます。
というかバイク、確か先週ぐらいに大学の同窓会ぶりにたまたま再会したのに婚約披露パーティーの歌司会してくれてめっちゃいい奴…歌上手いし褒めちぎってくれるし、司会業に転向しては…?

最初に結婚しようと思ったのはいつ問題、クリフォードの「ジェインにお茶を出された時」は適当っぽいんですけど、ジェインは「(クリフォードを迎える為)玄関のドアを開けた時」で本当にその瞬間に素敵な人、と思ったんだろうな…というのがちょっと切ないですね。
幸せいっぱいに見える二人の本当のところを知ってる客席としては「なんて似合いのカップルなんだ」「これ以上望ましいカップルなんて」という歌詞に、どういう顔したらいいか分かんないな…と思いながら観ています。

アランの「エドガーがいない」、苛立ってるというよりかは「いなぁい」って残念感が強くてかわいいな〜!駄々っ子アラン!
全然純情そうに振る舞えないマーゴットはまたしてもアランに振り払われてしまい…でもその後、強気でドレスを持ち上げて武藤寛さんを奪ってぶん回したりしてるマーゴットの方が私は好きだよ!

同じくチェンジパートナーのタイミングでさらっとクリフォードと組むシーラ。美術品のようなデコルテが眩しい!この場面のシーラのドレス、チュールの中にお花をキャンディみたいに包んで、それがリボンみたいに流れていて本当に素敵なんですよね~!
シーラがクリフォードを誘惑する傍ら、ブラヴァツキーに降霊会へ勧誘される男爵。渋い顔しつつダンスにも付き合っていてちょっとかわいい。
ブラヴァツキー、男爵が自分に背を向けてる時はなぜか口を開けて&匂いを嗅ぐみたいに背中に近づきつつ、男爵が振り返ったら涼しい顔してたりして、涼風さんが楽しそうで何よりです!

 

第1場C ホテルの片隅

リーベルの「兄さんの言うお友達って、どういう意味か解ってるの…」というセリフ、漫画だとエドガーが「きみは…それでいいの…?」と問い返して、『きみはだまってそこにいる なにもいわずとも そしてわかってくれる』というモノローグと一筋涙を流すメリーベルの表情の絵があるんですけど…毎回その絵を思い出してなんともいえず胸がギュッとなるんですよね…。

アランと思いがけず出会ってしまって動揺するメリーベル、友人として振る舞いながら時々見定めるような目をするエドガー、何も知らずメリーベルに一目ぼれして舞い上がっちゃうアラン。
千葉アラン、「親父はこの町で~」からのちょっと長めの婚約者説明セリフを全然噛まないし毎回すごく聞き取りやすいな~と感心してます。あと「また、会いにきてもいい?」で勇気を振り絞る感じでメリーベルの手を取るのがかわいい~!

 アランが無邪気な笑顔を見せて去った後、弦楽器の音が長く響くなかでの「どう?彼」の不穏さよ~!「それなら良かった」で優しい顔に戻るのがまた…!明日海エドガーのこういうところに本当にぞくぞくします。

 

第2場 降霊術イベント

加賀谷支配人、日に日にノリノリになっていってません?参加者の端っこに移動してから、霊界との交信~の腕の動きを一緒にやってたりして非常に楽しそうです。
シャンデリアの明滅も色々揺れるのも涼風ブラヴァツキーの圧倒的声量の影響では??みたいになってますが、降霊術イベントは盛り上がってるようで何より!途中、ねねちゃんシーラが冷たい顔でレースの扇を閉じるところが好きです。

イベント後、男性陣が降霊会の順番を決めている間のシーラとジェインの会話、シーラの「ドレスを見立てるのが趣味なのよ♡」がなんかお茶目でかわいくて!美しい貴婦人だけど気取ってなくて、ジェインの「素敵な方…」に、かなわないわ、という寂しい劣等感みたいなニュアンスがまじっちゃうのすごく分かるな…。

 

第3場A セント・ウィンザー(教室)

楽しいセント・ウィンザーだ~!険しい顔をしながらも生徒達の動きに合わせてちょこまか右行ったり左行ったりするアランがかわいい。「皆信じやすいんだね」ってツーンとしたと思ったら、「エドガー!」って駆けていくのもかわいい。エドガーの怪我が治ったのに驚く生徒達の反応に、思った通りだな!みたいな嬉しそうな笑顔になるのもとってもかわいい!
こっそり抜け出すところ、梅芸序盤に比べてかなりお芝居が細かくなっててすごくいいですね。壁にはりついたり、ちょっと身をかがめて進んでいく二人がめちゃくちゃかわいい!いっぱいかわいいって言っちゃうな~!

 

第3場B セント・ウィンザー(塔)

お気に入りの秘密の場所へ案内するって、デレっぷり半端ないな~とにっこりしちゃうと同時に、アランは「嫌なこと」を抱えてここへ一人で何度も来てるのかと思うと…可哀想でならないですね…。
「ペンダントを返せよ!」「いやだ!」とかキャッキャしてるの、めちゃかわいいんですけどセットがかなり高さがあるのでちょっとだけハラハラします。でも返してもらえて良かったね〜!漫画ではエドガーがわざと落として粉々にしちゃうからね〜!漫画のエドガー、ほんとに容赦がありません。

「神様!」と叫んで十字を切るアランが一瞬左右に視線を動かすの、梅芸ではしてたんですけど東京ではなくなっちゃった…見えない神様か何か、助けを探すみたいでいいなぁと思ってたんですけど…。
ここのソロ、東京で観たらすごく良くなっててびっくりしました。DVD、こっちを残してあげて欲しかったな…。

 

第4場 降霊会

おそらく職務上参加している加賀谷支配人、めちゃくちゃびびって椅子の上に縮こまってたりして、なんか一番エンジョイしてますやん~。
せっかく霊魂を呼び出してまで得た貴重なアドバイスこと「海辺の小屋には近づくな」、頼むから胸に刻みこんでくれ~!壁に貼って毎朝復唱してくれ~~〜!

思い悩むジェインをフォローしてくれて、クリフォードに苦言を呈してくれるバイク。ねぇジェイン、もうクリフォードやめてバイクにしとこ?ちょっと霊魂ガチ勢だけど、めっちゃいい奴だと思うよ!

 

第5場 生きる道

エドガーと男爵の緊迫したやり取りの中、「耳のすぐ下」「一番 柔らかい場所だ」の時だけどうしても男爵のバンパネラ豆知識…って思っちゃうな…。
エドガーがなぜアランを選んだと聞かれて答えた「生意気だが純粋でけがれていない」は漫画ではなく小池先生の書いたセリフですが、萩尾望都先生がすごく感激されたとのことで…講演会でもお話されていたそうです。(下記拝読しました)

「『ポーの一族』と萩尾望都の世界」講演レポート - ニュース:萩尾望都作品目録

100年以上ギスギスし続けてきたポーツネル一家がようやく一つに…!ていうか100年以上ギスギスし続けてるのもすごいな!?男爵もエドガーも、なんかこう、丸くなったりしないんだ?とか思いつつ、暗転中に少しだけ見られるここの四人のシルエットがすごく好きなんですよね…。

 

第6場 アランの苦悩(母の危篤)

再演から追加されたアランが白い薔薇の花束を執事バレットに預ける場面。アランが母を想う気持ちと、バレットには心を許しているのが感じられて、いいやり取りですね。
ここのカスター先生の芝居がすごく自然で、ただ話してるだけなのに「お医者様」って感じがするのが凄いなぁと思います。役者・西村さんの本領発揮っぷりに惚れ惚れしちゃう。

エドガーとの間にあんなことがあって、最愛のお母様は危うい状態で、内心の苦悩と憔悴を必死でつっぱって耐えてるアラン。そこへハロルドやらマーゴットやら…みんなやめたげてよ~~~~!

 

第7場 魂の絆

ここのリプライズ、旋律とサビの歌詞は塔の場面と同じですけど、前半の歌詞が自分を責めるような内容なのが悲しくて…アランは何も悪くないよ…。
あーちゃんメリーベルの「無理よ」「何故でも」もめちゃつら…駄目とか嫌とかじゃなく「無理」なんですよね…つらみ…。

そしてエドガーが現れ、『時の旅人』の場面へ。ここ、初演も好きでしたけど、演出変更されたなかでいっちばん好きです!!!!バンパネラとしての姿を全開にした明日海エドガーの迫力たるや!!怖いと美しいのハイブリッド!!

「何かあるのなら~」と歌い終わった直後、タララ♪ラララ♪タララ♪ラララ♪と音にあわせて四ポーズ連続で決めるところでときめきゲージが急上昇しちゃうんですよね…どれも素敵ですけど片足を横に伸ばして上半身を低くして両腕を広げるやつが一番かな~!!とにかく階段のセットと元トップスターの相性が良すぎる~!そんな状況じゃないのに条件反射でときめいてしまう~!!

一幕の『僕は狂っている』では恐ろしいバンパネラの自分を投影していた覆面のダンサー達を、このナンバーではまるで自分の手足のように使っているんですよね…。
アランの首を遠隔で絞めて指先をうねうねさせた後の、下から上へぐいっと引き上げる動きとその時の目、本当にバンパネラの目で、ぞわっとするけど毎回絶対に見ちゃう…。
解放されて走り去っていくアランも、残されたメリーベルエドガーも全員が傷ついていて…つら…『哀しみのバンパネラ』のリプライズが一幕よりも一層哀しく胸に迫ってきますね…。

 

第8場 ホテルのドレス・メーカー~ホテル・ロビー

がらっと雰囲気が変わってジェインのドレスを見立てる場面。華やかで大好き!
電話が入るからホテルを離れられない、とシーラが話し始めた時に狙いを察して、なんとも言えない顔でシーラを見つめるメリーベル。何も知らないジェインに優しくされて、分かってはいても複雑だろうな…。
目配せして出ていくシーラのことを「狩りに出かけた」と表現する男爵。「襲う」とか「食事をしただけだよ」とかでエドガーに超怒ってたけど、狩りはいいんだ…??男爵の地雷、難しすぎる~!

 

第9場A 海辺の道・第9場B 海辺の小屋

「メリーベルをジェインに預けてね」というセリフ、言外に「だから安心して」と伝えていて、シーラらしいしたたかなセリフだなぁと思います。
この海辺の道から小屋の場面、BGMがめちゃくちゃ好きです!
道で会話しているときは『永遠の愛』、天気が崩れてきて海辺の小屋へ向かう『嵐がやってきた』、シーラが誘惑する時に再び『永遠の愛』、そしてクリフォードがシーラの脈がないことに気づいた瞬間に音楽が消える…というのが、すごく物語の展開に沿っててぞくぞくします。

尻もちをついて後ずさるクリフォードに「クリフォード…」と囁きながら、すぅっと腕を差し伸べる仕草、劇中で一番シーラのバンパネラみを感じます。正面から見たら全身に震えが走るくらい、きっと美しくて恐ろしいんだろうな…。 

 

第10場A ホテル

階段を降りる前に男爵がエドガーの頭を撫でるやつ、いつからやるようになったんでしょうか。100年以上喧嘩を繰り返してきた筋金入りのバチバチ親子が!となんか感動しちゃいました。
髪が乱れ、唇に色がないだけであんなに美しかったシーラが見る影もなく生気を失っていて…毎回新鮮にショックを受けてしまいますね…。

 

第10場B カスターの診療所

最期に聞いた妹の声が、助けを求めて自分の名前を叫ぶ声になるの、あまりにも辛すぎませんか…。ずっと耳に残って離れないだろうし、その度に間に合わなかった後悔や哀しみに押しつぶされてしまうだろうな…。
もうここのエドガーの血を流すような言葉のひとつひとつが苦しくて…「少なくとも 僕は」メリーベルの為に、という自分の存在理由をも失ってしまったエドガーの絶叫、本当に辛いな…。

 

第10場C ホテル内

シーラが消滅して、男爵の手が空を抱くのが切ない…今回の演出、悲しくもロマンチックでいいですね。初演は2人が抱き合ったまま、組子達に持ち上げられ運ばれていくロマンチック御神輿でした。
あれだけ注意深かった男爵が人目もはばからず大声をあげたり、ボーイを吹っ飛ばしたり。
「一人で行って。私はいいから」というシーラに男爵が返す「誓ったじゃないか!」という言葉は婚約式での誓いを指してるわけですが、老ハンナに問われて誓いの言葉を口にしたのはシーラだけなんですよね。でも男爵はただそれを聞いていただけではなく、その時に男爵自身も同じことをシーラに対して誓っていたんだろうな…だから「(君は私に)誓ったじゃないか!」ではなく、「(二人で)誓ったじゃないか!」なんだろうな…と思って、「共に命果て」「共に塵となるまで」と誓いの言葉を半分ずつ口にした二人に涙目になっています。
小西遼生さんのポーツネル男爵はそんな風に思わせてくれる、シーラへの愛の強さがとても素敵ですね。最後までかっこよかったです。

 

第11場 アランの家

レイチェルに色恋を仕掛けてアランとマーゴットの結婚に協力させ、会社を手に入れるようとする叔父、そしてそんな叔父に靡いて息子の気持ちも考えず言う通りにしようとする母親…特に母親を慕っていた分、アランのショックは大きかっただろうな…。

エドガーがバルコニーに現れる場面、本当に幻想的で美しくて…。夜の冷えた空気の中に、二人の孤独、二人の傷ついた心と心が静かに吸いこまれていく感じがします。
アランが「行くよ。未練はない」と答えた時にエドガーの瞳がパッと輝くのがすごく素敵なので、DVDを手に入れたら100回見ようと思います!

 

第12場 時を超えて

初演ではクレーンを使った演出で初日の客席をザワつかせた場面、梅芸はおそらくクレーンは無いし、あっ良かった普通にバルコニーに立ってる~!と思ったら動いた~~~!2階から3階へ…また2階へ…ホームエレベーターか…?
どうしてもここは物理的に動かしたい!という小池修一郎先生の熱いこだわりを感じました。

 

第13場A ヘッセン家の居間・第13場B ギムナジウム

梅芸初日、ルイスが一人残って後ろを向いてから全然幕が開かなくてめちゃくちゃヒヤヒヤしました。「お前らどこにいるんだよ~!」「こっちだぜ~!」「早く来いよルイス~!」等のアドリブで繋ぎつつ、袖に駆け込み歌い出しに間に合わせたルイスほんとがんばった~!「ええっ!?」のびびりっぷりもかわいい~!
そんでグレン・スミスの名前を聞い時のエドガーの表情、なんとも言えず悪くていいんですよね~!完全にびびらせて楽しんでいる!
エドガーが目線だけでアランを促して、アランが頷いて扉の方へ歩いていくのも最高…わずかな仕草で意思疎通できるの最高…。
歌い踊る周囲の生徒達とは全く異なる時間の流れの中で生きていることを感じさせるような、ゆっくりとした歩みで去っていくエドガーとアランの後姿を最後に、幕となりました。
 

なんかもう、胸がいっぱいだな…と思いながら拍手をしてたら、明るくカーテンコールが始まって、明日海りお様のご挨拶とみりちばトーーークが毎回楽しくて、最終的にはにこにこして劇場を出ています。

花組ポーが大好きだったので外部再演に不安がなくはなかったけど…今の心境としては明日海りお様の公演発表時のコメント「自分が本当に納得いくまで仕上げて、皆様を『ポーの一族』の世界に誘います。 どうぞ安心して観にいらして下さい。」に嘘はなかったな、という気持ちです!めっちゃ誘われました!

公演期間の終わりが見えてきて寂しい限りですが…終わりがあるから〜?\美しい!/過行く時を〜?\愛しむ!/のコール&レスポンスを心の中で行いながら、最後まで楽しみつくそうと思います!どうか誰も欠けることなく、大千秋楽まで辿り着けますように〜!