タカラヅカと私

カスOL 兼 駆け出しのヅカオタ

星組公演『阿弖流為 –ATERUI–』 感想

奇跡的にチケットが取れた勢いで原作小説を買って、号泣しながら読み切って、原作を好きになりすぎて舞台化に少しの不安さえ抱きつつ観に行った阿弖流為。観劇から2週間以上経っているけど、いまだに「阿弖流為…良かったな…」と思い返している。それも「観劇した舞台の記憶」というよりは、「同じ時代を生きた仲間達との思い出」みたいな感じで、しみじみと浸ってしまう。気持ち的には胆沢の民。それぐらい、登場人物が舞台上で生きていた、とても良い作品でした!
全場感想を書くと1万字超えそうなので特に印象に残った場面のみですが、例によってネタばれしているのでご注意下さい。

 

第一場 プロローグ(伊治城)

幕開けは朝廷が蝦夷(えみし)の地に築いた伊治城内で神事を行っている場面。舞台上には4枚の縦長映像パネルがあり、そこに映し出された岩がどうやら神聖なもののようで。巫女達が蝦夷の神を祀っていることを輝咲玲央様@紀広純(きのひろずみ)に咎められる壱城あずさ様@鮮麻呂(あざまろ)。しーらんこと壱城様の抑えた芝居と、髭をつけても隠せない美…シリアスな場面なのにときめいてすみません…とか思って見守っていると、まずは神聖な岩を斬ってしまう紀広純。夜の相手を巫女に命じ、拒んで抵抗した巫女をそれならばとこちらも嘲笑しつつ斬り捨てる紀広純。開演して10分足らずで憎々しさがすごい。
目の前の惨劇に何も出来ず、紀広純が去ってから亡骸を抱きしめ、「許せ、我が妻よ…」と涙を流す鮮麻呂様。この場面は大野先生の創作だけど、「朝廷側がいかに蝦夷を蔑み、人として扱っていなかったか」「鮮麻呂が領地の民を守る為、いつか立ち上がる時の為にどれだけの苦しみを抱えて服従していたか」ということが観客に分かりやすく提示された導入部だったなぁと思う次第です。

鮮麻呂様がいつか蝦夷は立ち上がる、と語るのに合わせて4人の将に順にスポットが当たる演出、ベタだけど超かっこよかった〜!黒石の母礼(もれ)!江刺の伊佐西古(いさしこ)!和賀の諸絞(もろしま)!志和の阿奴志己(あぬしこ)!背後でそれぞれの名前が映像パネルに表示されて、小説でめちゃくちゃ慣れ親しんだ皆が…字面だけでアツい…と思ってたら、最後に主役の阿弖流為(あてるい)が真ん中から登場するわけで…!!
登場した瞬間から、わーーーなんかめちゃくちゃ阿弖流為!この若武者感!ヒーロー感!というオーラがあって、それだけで泣きそうになりましたね…。でも蝦夷チームの爆踊りが始まったので泣かずにガン見!!爆踊りからの歌もほんと最高だったな〜!! 

第二場 胆沢の里

鮮麻呂様が紀広純を討つ計画を聞き、協力を約束する阿弖流為達。その時、何者かが馬で駆けていく音が!「しまった!計画を聞かれた!」と血相を変える阿弖流為達!「わああ!めっちゃ好きな場面来ちゃう!」と心臓がバクバクし始める私!!

疾走する二頭の馬が中央パネル2枚、逃げる飛良手(ひらて)と追う阿弖流為の横顔がそれぞれ左右パネルに映されて、なんていうかゲーム画面ぽさがあった。阿弖流為が飛良手に飛びついて地面に転がったところで、二人がパネル裏から登場。天華えま様の飛良手、ビジュアルが私の飛良手のイメージにドンピシャでした…武闘派らしくワイルドな髪型、シャープだけどちょっと寂しげな目元、顔のおしゃれタトゥーすら飛良手っぽい…実際にはありえないのに…違和感とは…?
胆沢の首領である父親の側近、飛良手の裏切りにショックを受ける阿弖流為。朝廷側に鮮麻呂の計画を手土産に取り立ててもらう、と剣で襲いかかる飛良手と止めようとする阿弖流為の立ち回り、超緊張感がありました。
「俺の村は朝廷軍に襲われ、母者と姉は死んだ!その時、お前達首領は何をしていた!朝廷と戦う?それで犠牲になるのは俺達普通の蝦夷の民だ!」と吐露する飛良手の、「(例え朝廷に服従してでも)俺は母者と姉と生きていたかった!」っていうセリフに胸が締めつけられるし、それに対する阿弖流為の「朝廷に服従して命が保証されるならそうしよう、だが我らを人間と思っていないからこそお前の母上と姉様は殺されたのだ、しなければならないのはそれに対する戦いだ!」という主張にもハッとする。
合流した仲間達に裏切り者として殺されそうになる飛良手を庇った阿弖流為の「お前こそ蝦夷の魂だ」「蝦夷が自由に生きられる未来を見たくはないか!」という言葉の熱さに、飛良手の心に炎が灯ったのが感じられてすごく良かったし、私の心にも灯ってちょっと泣きましたよね…。
これ以降、飛良手は阿弖流為の腹心の部下として最後まで行動するようになるんですけど、めちゃくちゃ熱くないですか…!本当まこっちゃんのヒーロー感たるや…私も阿弖流為についていく…!!

 

第三場 平城宮ほか

変わってチーム朝廷。全然チーム感ないけど…。こっちもめちゃ個性が濃くて、まず万里組長のまさかの男役・桓武天皇が高貴なイケおじ様すぎて二度見。滲み出る「格」がすごい。
そんで参議達のキャラも強くて、中でも夏樹れい様の紀古佐美(きのこさみ)はイラッと感とコミカルさが絶妙のハーフアンドハーフ。高い声が醸し出す小物感としぶとさ、傲岸さと間抜けさ。後半にかけても出番が多いのも納得の存在感。
そんな中、唯一まともな瀬央ゆりあ様の坂上田村麻呂。普段のせおっちからは想像もつかない、シュッとした都の武者感!かっこいいよせおっち〜!でも普段のせおっち(「あなたの心にテレポーテーション☆」とか言ってる方)も好きだよ〜!
有能であっても年若く地位も低く、参議達を抑えることが出来ない田村麻呂・無能だけど地位があり、蝦夷討伐を出世の為の手柄のひとつとしか考えていない参議達・生母の地位の低さから参議達に内心軽んじられていることを感じている帝、という朝廷事情。めんどくさいトライアングル~!音波みのり様@坂上全子が可愛いのだけが癒し~!て感じでした!

 

第四場 黒石の河畔

阿弖流為の軍師、みんな大好き母礼(もれ)は綾鳳華様!!あやなちゃんの母礼、キャスト発表時から最高の予感しかしてなかったけど、やっぱり最高の母礼だった〜!
原作の母礼は「クールだけど内面は熱い知性派」て感じだったけど、綾鳳華様の母礼は「穏やかだけど内面は熱い知性派」な印象。阿弖流為よりちょっと年上(原作だと七歳上)で目元が優しくて、でも要所要所で母礼も蝦夷の男なんだな…ってちゃんと分かるし、分かるたびにときめき放題!!
鮮麻呂様の計画も、阿弖流為達が自分に会いに来ることも全部見通していて、「もう策も立てた」てさらっと言うところも原作通りだけど、原作より色々削られてる中で自然に成立させる綾鳳華様がすごいし、「策を!?」てびっくりしてる阿弖流為達がかわいかったな〜!

 

第九場 都の酉市

大野先生、上手く作ったなぁと印象に残っている場面。阿弖流為達が都に行く場面は原作ではもっと後半だけど、ここへ持って来て菟穂名(うほな)や鮮麻呂様のエピソードを詰め込みつつ、阿弖流為達の都人お衣装姿や酉市のお祭りでダンス場面も楽しめて、まさにヅカ演出家ならではの手腕かと!
ヒロインの佳奈の義弟(亡くなった夫の末の弟)菟穂名を演じたのは天彩峰里様。あんなにかわいらしいエンジェル峰里様、快活な少年役もお出来になるなんて…。
見世物のように移動式の牢に入れられたまま引き出され、人々から石を投げられてる蝦夷が鮮麻呂様と気づいた瞬間、本当に言いようのないショックを受けた。鮮麻呂様は紀広純を討った後、この騒ぎが蝦夷全体の反乱となれば朝廷側の大規模な報復があることを恐れ、阿弖流為達が力をつける時間を作る為に自分一人の責として捕らえられたわけで…。
蝦夷だと、その理由だけで痛めつけられる幼い菟穂名、救おうと飛び出して窮地に陥った佳奈と阿弖流為。皆を守る為に衆目を集め舌を噛み切る鮮麻呂様。ここの壱城様の芝居が凄くて、「鮮麻呂様ならきっとこうしたに違いない」と思わせてくれたし、めちゃくちゃ泣けた。

 

第十一場 都の酉市

木に吊るされ、晒されていた鮮麻呂様の首を、下ろして弔ってくれる田村麻呂。都の人間の酷さを見せられた後なので、より一層田村麻呂のまともさに感動する。全編通して原作ほどの見せ場はなかったけど、田村麻呂の腹心の部下・御園(漣レイラ様)もキャストに入っていて嬉しかったな〜!
そんで客席の中通路に現れる阿弖流為!鮮麻呂様を弔ってくれたことにお礼を言う阿弖流為…都人の非礼を詫び、しかし阿弖流為達が潜んでいたことを見抜いていた田村麻呂…。この立場は違えどお互いの力量と人間としての器を認めている感!!しかもそれが礼真琴様と瀬央ゆりあ様という同期のお二人!!改めてこの激アツ案件がすごい2017!!阿弖流為と田村麻呂が相見える大切な場面、めちゃくちゃドキドキしたし、第一幕のハイライト感があって超良かった!

 

第十二場 都の野辺

母礼の妹でヒロインの佳奈。原作ではそれほど書き込みがなく、「兄と同じくしっかり者の妹」ぐらいの印象だったけど、今回の「嫁いだ先の村が朝廷に襲われ、一人生き残った」という設定を違和感なく成立させる有沙瞳様の説得力よ…!たった一曲のソロで佳奈が歩んできた人生や辛かった気持ちが超伝わってきたし、ここでも泣いた…。
歌ウマでちょっとお姉さんな雰囲気、十八番は「天城越え」のくらっち、ひそかに応援してる!!
そこへやってくるまこっちゃん阿弖流為の包容力もまた最高なわけで。「俺では不足か?」って。私なら「俺ではふそ「いいえ!!」て食い気味にいっちゃうところ、くらっちの情緒的かつ気持ちが溢れ出す感じ、さすが元人妻。野辺の煙も空気を読んでいつの間にか消えている中での二人のデュエット、最高でした…!!

 

第二幕 第十三場 巣伏の河畔

史実にも蝦夷の圧倒的勝利の記述が残っている巣伏の戦い。川を利用して丸太を上流から流し、ほとんど戦わずして大勝利をおさめたことが(主に夏樹れい様の抜群の転がされっぷりで)表現されてたけど、どんどん策が成る面白さは是非とも小説を読んでいただきたい!でもそれはそれとして、やっぱりチーム蝦夷がいけいけドンドンで攻めてるところはわくわくするし、本当にみんなかっこよくて大好きです!

 

第十五場 黒石の里

チーム蝦夷の平和なわちゃわちゃタイム。ヅカ版では各地の将達がみんな阿弖流為と同年代の設定なので、青春ぽさがあるのが新鮮に感じる。先頭に立って戦ったことを母礼に叱られたり、誰が告げ口したんだと慌てる阿弖流為、すまん俺だ!て挙手する伊佐西古とか、原作のキャラクターを引き継いでるのがとても良い…ちゃっかり滝名(都で阿弖流為達の手助けをしてくれた蝦夷の女)とデキてる飛良手も愛しい…。
佳奈とのイチャイチャ弓練習も束の間、自分を狙う気配に気がつく阿弖流為。物語後半のヤマ、蝦夷内部の揺らぎが提示されて一気に緊張が高まるとか、大野先生お上手すぎるな〜!

 

第十六場 都近郊の子嶋寺

滝にうたれてる田村麻呂様。下ろしたおぐしがセクシーだけど、私はきっちりすっきりスタイルの方が好きかな…。そして始まる田村麻呂'sブートキャンプ。せおっちはかっこいい、かっこいいんだけど、本当にごめん、真顔すぎてちょっと面白くなっちゃった!申し訳ない!でも大好きだよ!!

 

第十七場 胆沢の里

伊佐西古:「策はある!なぁ母礼!!」
母礼:「いや、策はない」
伊佐西古:「ほら見ろないのだー!…え、ないのか?」
っていうやりとりの伊佐西古が最高に伊佐西古!!ひろ香祐様の朗らかでユーモア担当:伊佐西古もハマってたな〜。

阿弖流為の最後の策、ちょっと説明不足だった気がするというか、ただ単に阿弖流為が仲間の命乞いの為に自分一人が降伏する感じになってたような…。
長く続く戦の中で、戦の始まりも知らず、疑問を持つ者もいる→その者達に道を選ぶ時間をやりたい、数十年の平和が欲しい→その為には降伏ではなく対等な和議と、最後まで誇りを持って戦った証を残したいというのが阿弖流為の考えな訳で。無粋ですが小説を引用すると、

母礼は笑いで伊佐西古に言った。

「まさかわざと孤立を装うなどだれにも考えつかぬ。それで我らばかりが朝廷に抗う者となれば、他の蝦夷らはもはや逆賊でなくなる。朝廷も我らを退治するためには仕方なく他の蝦夷と手を組まざるを得なくなる。そうなると同盟軍。同盟を結んだ蝦夷らを処罰はできぬ。むしろ今後は味方として丁重に扱うことになる。(略)」

という…やっぱ母礼かっこいいな…。そしてその母礼が、一人で降伏すると言い出した阿弖流為を泣きながら殴る場面…はさすがに無かったけど、「子や孫らのために死んでくれ」「その覚悟などとっくにできている」のやりとりがあって嬉しかったし、ここも泣けた…。イメージでは苦笑いしつつさらりと、て感じだったけど綾鳳華様の「とっくにできている!!」っていう力強い言い方もめちゃくちゃ良かった…!!

 

第十八場 東和

最後の決戦。大劇場公演の半数の人数での公演だけど、朝廷側は娘役さんも動員+長い槍を使ったりして、なかなか迫力ある立ち回りだった。まさか諸絞の顔火傷エピソードをヅカ版に持ってくるとは思ってなくて、大野先生には感謝しかない。
仲間割れを装う為に殺したことにした諸絞が一緒に戦っていれば策がバレる。だから戦には参加せず生き延びてくれ、と阿弖流為達に言われたのに、一緒に戦って死にたい、こうすれば顔も分かるまい!て自分で自分の顔に火をかける壮絶さ…。諸絞は阿弖流為と序盤に確執があった相手だからこそ、よりグッときました。

 

第十九場 平安宮

ここの桓武天皇が怖くて…阿弖流為達の助命を嘆願する田村麻呂に対して、「民が私を称賛しておる声が聞こえぬか、見ろ、貴族達も何も言えずにおる」というようなセリフがあって、個人的な復讐心のようなものが垣間見えてぞっとしたし、冷徹な眼差しに呆然としてる田村麻呂の気持ちを思うとやりきれなかったな…。あの威圧感、組長さすがです!

 

第二十場 河内国の牢

表向きは都が汚れる、内心は都に入られることすら脅威と感じられたため、都ではなく離れた河内で処刑されることになった阿弖流為と母礼。処刑はヅカらしくさらりと暗転で処理されたけど、最後に阿弖流為が「蝦夷は鬼でもない。子や親を愛し、花や風に喜ぶ…。蝦夷に生まれて俺は幸せだった」と原作と同じ言葉を叫んでくれて、目頭が熱くなって涙がこぼれた。
そこからダメ押しの飛良手。生きることを許されたのに、阿弖流為と母礼の最後を見届けた上で後を追いにきた飛良手の潔い笑顔…介錯をする田村麻呂の方が泣きそうで…あぐらをかいて座る飛良手の、堂々とした背中…なんかもう今思い出しても泣けてくる…。

 

第二十一場 蝦夷の国

蝦夷の国を田村麻呂が訪れるラストシーン。佳奈と子供がひとり、地面に落ちた花びらを集めて空中に放って遊ぶ、穏やかな情景を見ながら語る田村麻呂。感情が入りすぎて、せおっちが「スンッ」て鼻をすする音がマイクに乗っちゃったりしてたけど、めっちゃ分かるから許すよ!せおっちのそういう気持ち溢れがちなところも好きだよ!ってなったし、最後に阿弖流為が現れた時は客席がせおっちどころじゃない鼻すすりっぷりで。ヅカは最後に晴れやかな姿を見せてくれるから好き…。

フィナーレもわりとガッツリめで、余韻を吹き飛ばす和JAZZとか最高でしたね…一緒に観てた先輩はびっくりしたらしいけど、私はタカラヅカのこういうところが超愛せるので全然ありです!珍しい民族系和衣装でのデュエットダンスもなんだか素朴で柔らかい雰囲気がめちゃくちゃ良かった〜!

 

原作小説を大胆に再構成しながらも、大切なところはしっかり押さえてあって、大野先生お見事としか!途中まこっちゃんperfumeのようにパネルの映像とシンクロして戦うシーンとかもあったけど、意欲的だっということで!何よりプログラムにも細かく人物紹介や実在・架空など明記されていて、阿弖流為に対する情熱を感じました。

ここからは完全に余談だけど、観劇後阿弖流為への気持ちが高まりすぎて、プログラムにも載っていた枚方市の「アテルイ首塚」と隣接する片埜神社へ参ってきたりした。写真は記念の石碑と、阿弖流為と田村麻呂のお守り・ご利益は友情というやつ!!記念碑の右奥にあった首塚には真新しい花が供えられていたので、今でも途切れずにお参りする方がいるんだなぁと阿弖流為人気をしみじみと感じたり。

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小ぢんまりしてて良い神社と公園だったので、お近くの方は是非!あと原作小説も是非!まこっちゃん達を思い浮かべながら読むと、面白さがうなぎのぼりの天井知らずです!!以上、「気持ち的には胆沢の民」がお送りしました!!